東京高等裁判所 昭和42年(ツ)123号 判決
一、上告代理人三枝基行の上告理由第一ないし五点について。
供託を公法上の法律関係とする以上は、弁済供託者の供託金取戻請求権は公法上の債権となすべく、しかるときはその性質上からいつても、公法上の原因に基づく国に対する金銭債権の一般規定である会計法三〇条の適用を排除すべき理由は認められない、従つて、原判決が右供託金取戻請求権について、会計法三〇条の適用があるとし、かつ、供託当事者間の争の終結した日から五年の経過により、同条によつて時効消滅するとした判断は、法律上の原因に基づく債権の消滅を認めるものであつて何ら国民の財産を不当に侵奪、没収することを容認するものではないから、所論第一ないし四点にいうように憲法の前文或いは条項に違反するものとは解されない。また、会計法三〇条には所論第五点にいうような限定は付されていないのであるから右原判決判断について所論のように会計法の解釈を誤つた違法があるものともいえない、よつて、論旨はすべて、独自の見解を主張するものというにほかなく、これを採用することができない。
二、債権に対する仮差押は、債務者が第三債務者に対してなす権利主張ではないから、当該債権の時効中断事由となるものではない。このように解したからといつて、債務者は、仮差押中といえども、時効中断に必要な限り、第三債務者に対して債権確認訴訟の提起その他の措置を講じ得るのであるし、仮差押債権者においても、必要がある場合には、債権者代位権を行使して第三債務者に対し時効中断のため訴の提起その他の方法を採り得るのであるから、何ら、所論のように不合理な結果を招来するものとはいえない。従つて原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。
(岸上 田中 平田)
(編注、上告理由第五点)原判決は、会計法の解釈を誤つている。
一 会計法は、その編別から明らかなように国の歳入及び歳出に関する事項に限り適用されるものである。
よつて、本件の如き歳入歳出外現金は、その対象外であり、そのことは、会計法の沿革に徴しても明らかである。
しかるに、原判決は、会計法に何等の限定も付されていないということのみを理由として、機械的に供託請求権に同法を適用する誤りを犯した。
二 仮りに、右上告人の主張に異論があるとしても、会計法第三〇条は、国に対して、実体的に請求権がある場合に適用になるべきものであつて、供託請求権のように、国が単に保管するだけの関係にあつては、その適用がないものと解すべきである。
しかるに、原判決は、そのような実体的な判断を全くしていない。